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夢見月~Primavera~

第1話 『運命のルーレット』

都内某所。その建物は一見すると何ということはない、ただの高層ビル。が、その実は、一般人は立ち入ることができない、会員制統合型リゾート施設。施設内にはカジノをはじめ、レストランやバー、映画館やスポーツジムなど、様々な娯楽が用意されている。上層階はロイヤルスイートの豪華な客室で、全室に専用エレベーターを完備している。ここの会員になるための絶対的条件…それは『伝統ある名家、またはそれに準ずる家名の者』。...

第2話 『不確かな自信』

華やかなカジノとは打って変わって、バーラウンジはしっとりとしたジャズの流れる落ち着いた雰囲気を醸している。トップライトは照度を落とし、淡い間接照明がその空間を照らす。ここでは身分を明かさなければ、誰と話をしてもいい。ここは出会いの場ではなく、ただ会話を楽しむためのスペースだから。類は誰と話すでもなく、ただ手元のグラスを見つめていた。さっき総支配人から聞いた言葉が類の頭の中を駆け巡り、どうにも心の整...

第3話 『別れの理由』

「牧野?」開いた扉の先にその姿はなく、一瞬戸惑う。だだっ広いリビングを見回してみても、人の気配がない。「…どこにいるの?」呼ぶ声に不安が混じる。出入りできるのはさっきのエレベーターだけ。逃げるなんてことは不可能だ。ならば、この部屋のどこかにいるはず。「かくれんぼ? いいよ、付き合ってあげる。 その代わり、見つけたら…わかってるよね?」類の胸の内に温かい感情が生まれる。やっぱり彼女は彼女だ。こういう茶...

第4話 『明けない夜』

類の足がゆっくりと広いリビングを抜けていく。その腕に愛しい重みを感じながら。「牧野、軽いね。 ちゃんとご飯食べてるの?」「た、食べてるよっ! そんなの、花沢類に…」焦るとよくしゃべるのは変わらない。再会した途端、今まで忘れていた記憶が次から次へと甦る。以前から不思議だった、フルネーム呼び。今まではそれでもよかった。けど、これから作っていく関係に、苗字は必要ない。「絶対、花沢類の方が食べてないでしょ...

第5話 『想い、届く』

それから3ヶ月の時が経った。あの日、類が目覚めた時、そこにつくしの姿はなかった。茫然とする類の目に留まったのは1枚のメモ。『花沢類へ。 昨夜はありがとう。 先に帰ってごめんなさい。 類と過ごした時間はとても幸せでした。 類があんなに情熱的な男性になってて、ちょっとびっくりしたよ。 でも、類の言葉全部、嬉しかった。 本当にありがとうね。 ここでの決まりで、しばらくは会えません。 でももし、あたしたち...

第6話 『幸せの始まり』

つくしが花沢の邸に移り住んで、1年が過ぎたその日。類とつくしは、たくさんの祝福の笑顔に包まれていた。半年前、桜の咲き乱れる春の日に、つくしは小さな生命をこの世に送り出した。類はその子供に『幸』という名前を付けた。「俺たちの幸せはこの子のおかげだから。 俺たちも、精一杯、この子を幸せにしてあげよ。」「うん。この子の幸せはあたしたちの幸せだもんね。 類、素敵な名前をありがとう。」その子供を腕に抱き、つ...

あとがき

こんにちは。北海道での大きな地震…天災とはいえ、とても心が痛みます。私も14年前、中越地震を経験しました。ライフライン全滅の中、生まれて初めて、恐怖で膝がガクガクしたのを思い出します。その当時、私は老人施設に勤務していて、地震が起こった時はちょうど夜勤中でした。けっこうな揺れだったな…とは思いましたが、外の状況はまったくわかりません。ケータイが混線していて家族に連絡が取れず、半狂乱一歩手前な職員もいま...