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夢見月~Primavera~

静の問い

牧野は『ありがとう』と『ごめんなさい』は魔法の言葉だと言う。確かに、言霊ってあると思うし、それを素直に口に出せるヤツは凄いって思う。俺は、育ってきた環境のせいか、その言葉が素直に言えなかった。そのせいで失ってきたものは、たぶん多い。『たぶん』っていうのは、気付いていなかったから。そして、今となっても、その多くは記憶の彼方に消え去った。無くても困らない。でも、あったら、もっといろいろ変わってたんじゃ...

答え合わせ

12月の寒空も気にならないほど、気持ちが昂ってた。こんなに必死に走ったのは、10年前、牧野が階段から落ちた時以来。けど、あの時とは全然違う…逸る気持ちで胸が痛い。その勢いのまま、藤堂の家の門を叩く。「静っ!静っ!」「あら、類?…どうしたの?」「俺、わかったんだ!さっきの答え…っ」ゼェゼェと乱れる呼吸の中、必死の思いで言葉を告ぐ、と。「そう…じゃ、答え合わせしましょ…入って。」フッと笑った顔はやっぱり綺麗で...

再会

12月28日。俺は今までで一番ってくらい、清々しい気持ちで目覚めた。本来なら、今日は人生で一番苦痛な日になるはずだったのに。それが一転、朝が待ち遠しいほど、楽しみな日になった。藤堂の家の車で走ること、数時間。降り立ったその場所を、俺は些か信じ難い気持ちで見渡した。「ここって…」「素敵でしょう?ここ。 海を眺めながらゆっくり休んでほしくてね。」静の視線を追って、その景色を眺める。小高いこの場所は周囲を緑...

ありがとう

人の気配に、牧野は顔を上げ、俺へと視線を向ける。途端、その瞳は真ん丸に見開かれ、驚きのあまり、声も出ない。「…久しぶり。」ヒラヒラと手を振り、然して気にした風もなく歩み寄る。俺を見つめるその表情はあの頃のままで、何だか懐かしい。「クスッ…すごい顔。 そんなにびっくりした?」さっきまでの不安は、牧野の顔を見た瞬間に吹き飛んだ。そして、今は愛しさしか感じない。何ができるか、じゃない。前みたいに、傍にいれ...