2016.03/02(Wed)

弥生三月花の頃

3月ですね!
まだ寒い日もありますが、心くらいほんわかしたいな、と思って書きました。
雰囲気が伝わったらいいなぁ(* v v)。


゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


F4が卒業して、1週間。
何だか心に、ぽっかりと穴が開いた感じがした。
『いつも』あった笑顔や声が、これからは『いつも』じゃなくなる寂しさ。
類が隣にいることが当たり前になっていたんだと、改めて実感した。


いつもの非常階段。
ついこの前まで、ここで類との穏やかな時間を過ごしていた。
楽しいことも、辛いことも、いっぱい聞いてもらったっけ。
手すりに手をつき、空を見上げる。



「…何、見てんの?」

ふっと声を掛けられ、驚いて振り返ると、そこにいたのは類だった。

「…花沢類…卒業したんだよね?」

相変わらず気だるげなのは変わらないんだな、と少しホッとする。

「んー…何となく来てみた」

類が床に腰を下ろすと、私もその隣に座った。

「でも、ここにいていいの?」

「…いい」

眠そうに小さく欠伸をすると、腕を組んだ姿勢でウトウトし始めた。



私は抱えた膝に頭を乗せ、その横顔を見ていた。

ー 相変わらず綺麗な肌だなぁ…

寝顔さえも綺麗で、憎たらしいとさえ思う。

ー でも、やっぱ好きだなぁ…

このままずっと時間が止まればいい。
そうすれば、この人は私だけのもの…-。



「…そんなに見られたら、寝られない」

寝ていると思った類が、ボソッと呟く。

「あ…ごめん…」

優しい瞳とぶつかり、慌てて目を逸らした。

見ていないことをアピールするように立ち上がり、再び階段の手すりに手をつく。

再び類の規則的な寝息が聞こえてくる。

それを感じながら、また空を見上げる。

ー 春眠暁を覚えず、だね

ま、類は一年中暁を覚えず、なんだろうけど。

思わずクスッと笑いがこぼれた。

「…何、笑ってんの?」

またもや、寝ていると思っていた類が呟く。

「…何でもないよ」

こんな穏やかなやり取りも、あとどれくらいできるんだろう?

一緒にいたいと思ってるのは、たぶん私だけ。

これから大学とか仕事とか、いろいろ忙しくなったら、きっと私のことなんて忘れちゃうんだろうな。

ー しょうがないよね…

小さく溜息をつくと。

「…ねぇ」

類をまた起こしてしまったみたい。

ここは元々は類の安息地だから。

私は邪魔をしちゃいけない。

「ごめん…帰るね」

類を見ないように、階段へと足を向ける。

ー 次はいつ会えるんだろう…

約束のできない関係だから、今日みたいな偶然を待つしかない。

そう思うと寂しくて、類を見ることなんてできなかった。

その時。

グイッと右手を引かれる。

突然のことに、バランスを崩した私は、あろうことか、類の腕に抱き留められていた。

「あ…ごめ…」

咄嗟に体を起こそうとしたのに。

類がそれを阻んだ。

「やっぱ…この方が落ち着く…」

「え…?」

「ねぇ…ずっとここにいてよ…」

「…何で?」

「牧野が、好き…だから」

そう言った類の笑顔がとても綺麗で。

「邪魔だったんじゃないの?」

「そんなこと、言ったことないでしょ?」

「だって…」

「もう…黙って」

類の綺麗な顔が近づいて、優しく唇を奪われる。

その甘い感触に、私も目を閉じた。






テーマ : 二次創作:小説 - ジャンル : 小説・文学

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