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Moonlight Rhapsody ~Ⅳ~

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Category【5万HIT】Moonlight Rhapsody

パーティーでの出会いから数日。
名刺に書かれたその文字に溜息が漏れる。

『山田花子
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それが偽名であることは、火を見るより明らかだ。
ということは、名前の下に書かれた電話番号も偽物だろう。
念のため、と、一応確認してみたが、やはりそれは適当な数字の羅列だった。
その女性のことをあきらにも聞いてみたが、取引先の一社員だったのか、記憶にないと言う。
そもそも人一倍他人に関心のない類が、一度会っただけの女の顔を事細かに覚えているはずもない。
ましてや新月の晩で、薄暗がりの中での出会いだ。
その顔を思い出せという方が無理だろう。

八方塞がり。

僅かな期待を裏切られ、落胆を隠せない類の元へ、今日も『いつも』のように知らない女が訪ねてくる。
どこかの部署の、名前も知らない女。
社員であることは、その胸の社員証を見ればわかるが、それ以上の興味はない。
秘書に促され、隣室へと向かう女の頬が僅かに朱いのは、この後の行為を知ってのことだろう。
どうして、好きでもない男にその身を差し出せるのか。
女たちの貞操観念のなさに呆れもするが、そうさせているのが自分だと思うと反吐が出るほど嫌になる。
が、そんなことは言っていられない。
秘書が退室したのを目の端で確認し、重い腰を上げる。

ー どうせ、今日も無駄に終わるんだ

ネクタイを軽く緩め、その部屋へと向かった。







その再会は本当に偶然だった。

週末。
幼馴染に呼び出され、出向いた先は彼らの行きつけのクラブ。
いつもなら断る誘いに乗ったのは、ほんの気紛れだった。
音の洪水に軽い頭痛を感じ、回れ右をしたくなるのはいつものこと。
溢れかえる人混みを避けながら目線を走らせた先に、やっとその姿を見つけた。

「総二郎」

数人の女性を侍らせ、談笑している幼馴染に近寄ると、それに気付いた男が軽く手を挙げた。

「お前が来るなんて珍しいな」

「呼び出しといて、何それ」

「まぁ、そう言うなよ。
 今日は珍しく司も来てるんだ」

その視線の先には、やはり見知った幼馴染の姿。
その隣には小柄な女性が立ち、何やら楽しそうに話をしている。

「あれ、司の婚約者だってさ。
 大河原石油の一人娘。
 司の母ちゃんが考えそうな政略結婚だよな」

半ば呆れたように説明する総二郎の言葉を聞くともなしに聞きながら、二人の様子を窺っていると。
司の女が連れの女性に腕を絡め、笑顔を向けた。
その後ろ姿に、不思議な既視感を覚える。

「あれ、誰?」

「あ?ああ。
 あれはあの女のダチだって」

「ふーん…」

遠巻きにその姿を見つめていると、視線に気付いた司が類に笑顔を向けた。
その様子に、横の女二人が類の方へと振り向く。

「「あっ!」」

恐らく同時に発せられた驚きの声。
と同時に、女は苦笑を浮かべる。
何々?と訝しむ総二郎を余所に、類はその女の元へと足を向けた。



「こんばんは。『山田花子』さん」

類の言葉に、『山田花子』と名乗った女はバツが悪そうに小さく会釈を返す。

「え?何?知り合いなの?
 つくしも隅におけないなぁ~!」

「し、滋さんっ!人聞きの悪い…っ」

グリグリと肘で突かれ、顔を赤らめながら焦ったように話すのは紛れもなくあの時の女だった。

「類、知ってんの?」

「んー、この前、あきらんとこのパーティーで会った。
 ね?『山田花子』さん」

類の意地悪い視線に、その目が泳ぐ。

「え~?何その名前!
 どういうこと??」

「え?違うの?
 もしかして俺、騙されちゃった?」

類が態とらしくしょんぼりとしてみせると、それを面白そうに司が笑う。

「牧野にしちゃあ、うまく躱したな!
 まぁでも、こいつは俺のダチだから大丈夫だぞ!」

「ふーん…マキノさんていうんだ」

「そうだよ!『牧野つくし』!
 ていうか、何で『山田花子』?」

「そ、それはっ…」

滋に突っ込まれ、必死に言い繕うつくしの姿に類の頬も緩む。
こんなに笑ったのはいつぶりだろう。

「そりゃ、そうだよなぁ。
 あの悪名高い花沢物産の『専務』だぜ?」

ニヤリと笑った司に、バツが悪いのは類の方だ。
公にしていなくても、その噂は耳に入っているのだろう。
滋は小さく『あー…』と呟く。

けれど、それを知らないのか、つくしはきょとんとした顔で類を見上げる。

「悪名高いんですか?」

「んー…まぁ、いろいろ?」

つくしが知らなかったのは幸いかもしれない。
けれど彼女がそれを知った時、どんな顔をするのか想像すると、背筋に嫌な汗が流れる。

「つくしはお子ちゃまだからなぁ…知らなくてもいいんだよ」

滋の意味深な言葉に、つくしは更にきょとんとする。

「まぁ、アレだ!
 『後はお若い二人で沈黙を深めて』ってヤツだな!」

「司…沈黙深めてどうすんの…」

世界経済を担う道明寺グループの若きリーダーは多少日本語が不自由らしい。
相変わらずだな…と呆れ顔の類に、司は焦ったように言い繕う。

「な、何でもいいじゃねぇかっ!
 と、とにかく、何か深めてこいっ!」

顔を真っ赤にした司が滋の肩を抱き、その場を離れる。
滋は『つくし、がんばってねぇ~!』と手を振りながら、司と共に人混みへと消えていった。




残された二人は気まずそうに視線を彷徨わせる。
このままじゃ、本当に沈黙が深まるばかりだと思い直し、類はつくしに少しだけ顔を寄せ囁く。

「場所、変えよ。
 ここじゃ煩くて話になんない」

類にとって騒音にしか聞こえない音楽もさることながら、幼馴染の興味津々な視線も痛い。
『え?』と驚くつくしの手を取り、人混みを避けるようにその店を後にした。


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