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Moonlight Rhapsody ~Ⅷ~

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Category【5万HIT】Moonlight Rhapsody

花沢物産本社ビル。
高く聳え立つその建物を見上げ、つくしは深い溜息を吐く。
上司である滋の遣いとはいえ、なぜ自分が来なければならないのか。
好意にも悪意にも取れる、滋の計らいにつくしの足取りは重い。


インフォメーションカウンターで用件を伝えると、受付の女性から訝し気な視線を向けられる。
つくしにしてみれば社用での訪問であったが、これまでの経緯を思えば当然なのかもしれない。
『暫くお待ちください』と告げられ、カウンター脇で待っていると、エントランスにカツカツとヒール音が響いた。


「花沢専務にお取次ぎを」

カウンターに高圧的な女性の声が響く。

「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

つくしの取次対応をしていた女性がその手を止め、毅然とした態度で対応に当たる。
この人も大変だなぁ…と、つくしはぼんやりとその様子を窺っていた。

「…様、ですか。
 その件に関してはご連絡させていただいた通りでして、お取次ぎいたしかねますが…」

「冗談じゃないわっ!
 どれだけ待たされたと思って?
 専務のお相手ができるのは私以外にいないと、伝えなさいっ!」

「ですが…」

「いいから、早く取り次いでちょうだい!
 私に会えば、専務だって気が変わるはずよ!」

苛々とした態度で受付の女性を睨む。

ボディラインを強調するようなスーツに、スラリと伸びた手足。
ふんわりとウェーブの緩くかかったロングヘア。
やや濃い目の化粧に、きつい香水の香り。
黙っていれば美人。
けれど、その態度は最悪だ。

呆れたように受付の女性が内線に手を伸ばす。
電話越しに何か指示を受けたのだろう、女性へエレベーターで上に上がるよう案内をした。

「ほらね、ごらんなさい。
 専務は私に会いたいに決まってるじゃない。
 まったく、手間を取らせないで!」

再びカツカツとヒールを鳴らし、エレベーターへと向かっていった。


ー あー…花沢さん、あの人と会うんだ。
  あの調子だと、シないわけにはいかないんだろうな…。
  …って、ちょっと待って?
  そんなことした後にあたしに会って、何て言うつもり?


沸々と怒りに似た感情が頭を持ち上げる。
自分に『好きだ』と言いながら、他の女性を抱ける彼の気が知れない。
そう思った瞬間、カウンターからつくしを呼ぶ声が聞こえた。

「牧野様、お待たせして申し訳ありません。
 専務がお会いになると…」

「結構ですっ!
 これ、花沢専務にか・な・ら・ずっ!渡してくださいっ!」

バンッと封筒を叩きつけるようにカウンターへ置き、つくしは踵を返す。

「えっ?ちょっ!牧野様っ!」

慌てて呼び止める声に振り向きもせず、つくしは花沢物産を後にした。




怒りに任せズンズンと歩くつくしに、周囲が怯えたような視線を向けるが、そんなことはお構いなしに足を進める。
滋から直帰でいいと言われていたのをいいことに、そのまま自宅へと向かった。

悔しい…でも、絶対に泣かない!
あんなに悩んだ時間を返せっ!

誰に言うでもない言葉は虚しく空に消える。

泣かない…泣きたくない…あんなヤツのためになんか…

そう思うのに、知らずと溢れた涙を止めることができない。

真っ直ぐ見つめる、茶色の瞳。
好きだと囁いた、熱の籠った声。
少しひんやりとしているのに、心地よい手の温もり。
見た目よりもしっかりと筋肉のついた腕。
そして、一度だけ額に触れた、柔らかい唇。

思い出したくもないのに、次から次へと溢れ出る記憶の片鱗に胸が苦しくなる。


たった2回しか会ってないのに、こんなに好きになっていたなんて。
そう自覚した途端、崩れ去った想い。

まだ、大丈夫。
まだ、傷は浅い。
すぐ立ち直れる。
これは夢だったんだ。
だから、忘れよう。
とにかく、家に帰って、布団を被って寝てしまおう。

溢れる涙をゴシゴシと拭い、前を向く。
そして、再び足を踏み出した、瞬間。



「…って!…待って!」

いきなり腕を掴まれ、引かれる。
不意の力にバランスを崩したつくしを、力強い腕が抱き留めた。

「な、んで…帰るんだよ…」

聞き覚えのある声。
身に覚えのある感触。
走ってきたせいか、少し荒い呼吸が耳を掠める。

「い、やっ…!」

突き放そうと、つくしは腕に力を込めるが、ビクともしない。
やめてっ!離してっ!と叫ぶのに、解かれる気配のない力強い腕がつくしを拘束する。

「やだ。離さない。
 ちゃんと訳を聞かせて?」

「そ、んなのっ…胸に手を当てて、考えなさいよっ!」

「それは…過去のこと?」

「違うわよっ!今!ついさっき!」

「…何のこと?」

本当にわからないのか、類は首を傾げる。
それでもなお、抗議の声を上げるつくしに、道行く人々が好奇の目を向ける。

「…とりあえず、場所変えよう…こっち来て」

歩き始めた類に手を取られ、つくしは半ば引き摺られるように付いていった。


どこを、どれくらい歩いたのか、わからない。
気付けばそこは閑静な住宅街だった。

「ちょっ!手、離してよっ!」

「やだ。だって離したら、あんた、逃げるでしょ?
 それに、俺、あんたと手繋ぐの好きだしね」

この状況が『手を繋いでいる』といえるのか?と素朴な疑問を持つが、強引なその手も嫌いではないと心のどこかで思ってしまう。
忘れようとした瞬間に引き戻された感覚が、不本意ながらも愛しい。

「…もう、何なのよ…」

「文句は後で聞くから。
 とりあえず入って」

気付けば、目の前には重厚な門構えの大邸宅。
その表札には『花沢』の文字。

「ここ…」

「俺んち。何もないけど、どうぞ」

再び手を引かれ、その門を潜る。
その先に広がる景色につくしは息を飲んだ。


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2 Comments

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2016/11/03 (Thu) 10:10 | EDIT | REPLY |   

聖  

3**母様

タイミングよすぎっ!と言われそうですが、あえてそこは気にしません(笑)
なんせ、私の妄想ですからね♡

ぜひぜひ、うちの類くんにドキドキしてください( *´艸`)

手を抜かず気を抜かず、大事に書いてます。
続きもお楽しみくださいませ♥
コメントありがとうございました♪

2016/11/04 (Fri) 04:21 | EDIT | REPLY |   

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