2017.02/02(Thu)

THAT NIGHT【Cap.17】


つくしに着替えを渡し、『ちょっとだけ』と断って、その場を離れる。
一瞬寂し気な表情を見せたが、優しくキスを落とし、すぐ戻るよと囁けば、小さな頷きが返ってきた。


俺も身支度を整えながら、田村へと電話を掛けた。
夜更けの電話にも拘らず、それを気にした風もないのは俺の身勝手を解っているからかもしれない。

「ちょっと頼みがある。
 これからつくしを連れてマンションに行くから、タクシー回して。
 それと、暫くあそこで暮らすことになると思うから、事務所として使えそうな所を探してほしい。
 で、決まったら征木たちに連絡しといて。
 それが決まるまでは、それぞれ自宅で仕事を進めてもらって。
 くれぐれも、あの部屋には誰も近付けさせないで」

『承知しました。
 急ぎの仕事もありませんし、ごゆっくりなさって大丈夫ですよ。
 何かあればメールかFaxでご連絡致します』

「ありがとう、よろしく」

相変わらず、気のいい男だと思う。
これまでだって、散々俺に振り回されてきたのに、文句の1つも言わない。
花沢からの呪縛を解かれてもなお、俺に付いてくれていることを選んだあいつには感謝してもしきれないだろう。

が、今はつくしを最優先にしたい。
仕事も大事だけど、それはつくしがいてこそ、なんだ。
勝手だと罵られようが、かまわない。
今の俺に必要なのはつくしとの時間で、すべきことは彼女の傷を癒すこと。
そこに何ら迷いはない。


「ハル…?」

心細げに俺を呼ぶ声に振り返ると、何とも可愛らしいつくしの姿があった。

「ふふ…可愛いな」

思わず漏れた笑みに、つくしは恥ずかしそうに俯く。

「…ハルの服、おっきいんだもん…」

間に合わせに選んだ長Tとハーフパンツは俺の物。
下着は俺と出会ってから新調した物を選んだ。
長すぎる袖を折り返し、袖口から見える小さな手をそっと取ると、その指先に唇を寄せる。

「いいね…俺のモノ、って感じ」

そのまま体を引き寄せ、やんわりと抱き締める。
つくしの愛用しているシャンプーと俺の服の香りが混ざり、何とも言えない幸福感に満たされる。

「何か、ハルに抱かれてる気分…」

「うん…つくしから俺の匂いがするの、いいね」

自然と重なった唇の甘さに、溺れそうになる。
が、一瞬の携帯の振動が、それを阻んだ。

「続きはまた後で。
 車来たから、行くよ」

離れ難い唇に軽く触れると、つくしの手を取り、玄関へと向かった。

「ほんとに何も持たないで行くの?」

「うん。必要な物は向こうで揃える。
 あ、でも貴重品とかは持ってく?
 財布とか通帳とか…けど、携帯は置いていって。
 明日にでも新しいの、用意するから」

「え?」

「…あいつから連絡来るかもしれないし。
 ごめん…俺、つくしに関しては、全然余裕ないから」

バツの悪そうな俺に、つくしはクスッと笑みを漏らす。

「いいよ、ハル。
 ハルの思うようにして?
 もう、あたしはハルのモノなんだから」

微笑みながらも繋いだ手を解き、本当に必要な物だけを取りに行く。
通帳と印鑑を手近な紙袋に入れ、財布から現金とカード類を取り出す。
空になった財布はテーブルに置いた。

それからキッチンへと向かうと、その手に2つのマグカップを持って出てきた。

「これ、持ってってもいい?」

それはいつだったか、二人で買ったお揃いのマグカップ。
『一緒にコーヒー飲む時はお揃いがいい』と、つくしが恥ずかしそうに言ったのを思い出す。

「いいよ。またそれで一緒にコーヒー飲もう」

つくしの可愛い我儘に、思わず笑みが零れる。
割れないように、とキッチンペーパーでカップを包むと、それも紙袋へ入れた。

「あとは?」

「んー…これでいい、かな」

「置いていった物は全部処分するよ?」

俺の言葉に、つくしは過去を懐かしむように部屋を見渡す。

「あたし、この部屋に5年住んでたの。
 いろいろあったけど、今思い出すのはハルと過ごした時間かな。
 この先何があるかわかんないけど。
 ハルが傍にいてくれるなら、どこにいても同じだよね」

俺を見上げ、幸せそうにニッコリと笑う。
守るべきものが目の前にある歓びに、胸が熱くなった。

「うん。これから、いっぱい楽しい思い出作ろう。
 つくしのことは俺が幸せにするから。
 だから、ずっと俺の横で笑っててよ」

「うん。これからもよろしくお願いします」

深々と頭を下げるつくしの頭をポンポンと撫でる。
それはこっちがお願いしたいくらいだ…と言いたい気持ちを飲み込んで。

「了解。じゃ、行くよ」

つくしの肩を抱き、部屋を出る。
ドアを閉める間際、つくしは部屋の中に向かってお辞儀をした。

「今までありがとう…行ってきます!」

それは幸せへの第一歩。
いろんな不安もあるだろうに、それをおくびにも出さず前を向く。
そんな彼女に、愛しさは増すばかりだ。

ー ヤバい…俺、どんだけつくしのこと、好きになるんだろ…


言えぬ想いは身を以て伝えよう。


そう心に誓い、つくしと共にタクシーへと乗り込んだ。


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 | 2017.02.02(木) 08:15 |  | コメント編集

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 | 2017.02.02(木) 09:01 |  | コメント編集

●み**ゃん様

こんにちは~♪
コメントありがとうございます(*^-^*)


どうしてこうも従順なんですかね?
「え?携帯くらいいいじゃん」とか…まぁ、言わないか(笑)
翌日、類が持ってくる携帯はたぶん類と同じ機種♡
トリセツは類ですね(*ノωノ)


お花畑ですみません(^▽^;)
アイツの退治はお任せください(`・ω・´)

もうちょっとで開設1周年です♪
皆さんに支えられて、何とかやってこれました!
これからもよろしくお願いしますm(_ _"m)

ありがとうございました(´▽`*)♪
聖 | 2017.02.02(木) 14:07 | URL | コメント編集

●ロ**ン様

こんにちは~♪
コメントありがとうございます(*^-^*)


ほんとに全部置いていっちゃいましたね(^▽^;)
つくしちゃん従順すぎ?(笑)
類くんの服を着たつくしちゃんはさぞかし可愛いかったでしょうね( *´艸`)

身元を明かすのはもうちょっと先かな?
それは追々のお楽しみってことで♪

まぁ、いろいろあり得ないだろ!って自分でも突っ込みつつ書いてます(笑)
妄想ってステキ♡
類くんもステキ♡

こんな類くんを許してくださるロ**ン様に感謝です♪
ありがとうございました(´▽`*)♪
聖 | 2017.02.02(木) 14:14 | URL | コメント編集

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