2017.03/08(Wed)

THAT NIGHT【Cap.36】


半年ぶりに帰ってきた、『ハル』と暮らしていたマンション。
そこは最後に見たままで、何も変わっていなかった。

「ねぇ…もしかして、ここには全然帰ってきてなかったの?」

そうと思うのは、食洗器の中があの日のままになっていたから。

「うん。最初の頃は忙しくてずっと会社に泊まってたし。
 どうしてもって時はつくしのアパート行ってたから」

「そっか…」

アパートの部屋とは違って、こっちの部屋はまったく掃除がされておらず、所々に埃が目立つ。
ベッドも、あの朝のままだ。

「ここには誰も入れたくなかった。
 ここで会社を立ち上げたのも、つくしと一緒にいるためだったし。
 つくしがいないなら、この部屋はあっても意味がないんだ」

その存在を確認するかのように、類の腕があたしを捕らえる。

「…ほんとに戻ってきたんだ」

「もう逃がさないよ?」

笑いながらも、どこか不安げな類に、あたしは精一杯の笑みで応える。

「うん。もう逃げないよ。
 離れてみてわかった…あたしの居場所は『ここ』しかないって」

類の胸に顔を埋め、その匂いを思いっきり吸い込む。
それがあたしの血液に乗って体中を駆け巡り、髪の先から爪の先まで類で満たされる。


ー ああ…幸せ…
  こんなに好きなのに、どうして離れていられたんだろ。


「『離れて解る、その存在の大切さ』だってよ」

「ん?何?」

「理事長が言ってた。
 『志乃』ちゃん、男に言い寄られてたんだって?」

「…えっ?」

覚えてないわけじゃないけど、完全に忘れてた。
面と向かって好意を告げてくれた彼らのこと。
でも、その気持ちを、あたしは受け入れることができなかった。
想いを告げられるたびに思い知らされた、類への想い。
あの頃は、またこうして抱き締めてもらえるなんて思ってもいなかったのに。
類への想いだけは、忘れることができなかった。

「ずっと…心は俺の傍に置いててくれたんだってね?」

額に触れる、柔らかな感触。

「はは…そんな実体のないもの、気付いてもらえるわけないのにね」

「でも、それはつくしにとって、一番大切なものでしょ?」

一番大切な、あたしの心。
大切だからこそ、類の傍に置いておきたかった。
それを…わかってくれるの?

「だから、俺、がんばれたんだと思う。
 言われるまで気付かなかったけど、でも知らないとこでつくしに支えられてたって今は思える。
 つくしに会う前の俺ってほんと無気力だったから、どうしてこんなにがんばれるのか、正直自分でも不思議だった。
 もう無理って何度も思ったけど、そのたびにつくしの心が俺を抱き締めてくれてたんだね」

「そうなのかな…あたしにはよくわかんないけど…」

「うん。でも、これからは心だけじゃなくて、ちゃんと抱き締めてくれるんだよね?」

何千人もの社員を抱える大企業のトップに立つ。
それがどれだけの重責なのかは、あたしには想像もつかない。
けど、あたしの存在が類を支えられるのであれば、それは何よりも嬉しいと思う。

「あたしで、いいの…?」

「つくしじゃなきゃ、ダメなの」

「そっか…じゃあ…」

あたしは類をギュッと抱き締める…ありったけの想いを込めて。

「ずっと…こうしててあげるね」

「うん…ほんとにずっと、だよ?」

その言葉にあたしが頷くと、類が僅かに安堵の息を漏らした。


これからは類を支えていくことがあたしの役目なんだ。
どんなに辛くても苦しくても、もう逃げない。
類のことが誰よりも大切だから。


「…よしっ!じゃあ、大掃除するよっ!」

満面の笑みを向けると、類は一瞬驚いた顔をする。

「半年もほったらかしちゃったからね。
 埃も溜まってるし、ベッドのシーツも替えなきゃ!
 類も手伝ってくれる?」

「…いいよ、何すればいい?」

あたしの勢いにつられるように、類も笑顔で袖口を捲り上げた。


広い部屋に、あたしたちの笑う声が響く。

ー 類と、いつもこうやって笑っていられたらいいな…

テーブルを拭く類の後ろ姿を見ながら、あたしは幸せを噛みしめていた。


☆--:*:--☆--:*:--☆--:*:--☆--:*:--☆


さてさて。次回ほんとに最終話です。
どんなラストをご所望ですか?( *´艸`)


皆さまからのコメントや拍手、本当にありがとうございます♪

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 | 2017.03.08(水) 08:41 |  | コメント編集

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 | 2017.03.08(水) 12:42 |  | コメント編集

●3**母様

こんばんは~☆彡

いよいよラストですねぇ…何気に長かった(^▽^;)
書き始めた当初はこんなに長くなる予定じゃなかったんですがね(笑)
まぁ、途中、いろいろ盛りすぎました( *´艸`)

さてさて、王子に掴まった姫ですが。
『甘いの!』をご所望ですか(笑)
うーん…甘くなったのかなぁ?(;´・ω・)
ご期待に添えなかったらごめんなさい!(先に謝っとく(笑))

明朝6時をお待ちくださいませ♪
ありがとうございました(´▽`*)
聖 | 2017.03.08(水) 22:38 | URL | コメント編集

●ず*様

こんばんは~☆彡

いよいよというか、やっとというか…ラストまで来ましたよ~(^^♪
意外に時間がかかっちゃいましたねぇ(;´・ω・)
こんなに長く書く予定じゃなかったんですが、寂しいって言っていただけると書いた甲斐がありますね(*^-^*)

私が考えるラスト…ハピエンは確定ですが。
どんな感じになるのか、楽しみにしててください(笑)
そして、期待にを裏切ったらごめんなさい(^▽^;)

完結したら、私も読み返してみよう!(ぇ
もしよかったら感想を聞かせてくださいね♪

ありがとうございました(´▽`*)
聖 | 2017.03.08(水) 22:49 | URL | コメント編集

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