2017.08/25(Fri)

vacances d'été 第5話 -空色-


第5話



5_sorairo.jpg
Illustration de Mme Yako. Remerciement spécial!!





【More・・・】

…………ガッ………


「……つっ!……何すんだよっ!」

「何する?………それはこっちのセリフなんだけど?」
「あんたさ、自分が何をしたか解ってないでしょ?」

「………………………」

「………もしもの事があったら……」

「………………っ………」


「………もしもの事があったらっ!」
「あんたのした事は犯罪になりかねないって言ってんだよっ!!!」


***


思いの外先方との打ち合わせが長引いてしまい、LINEに目を通したのは槐によってつくしが洞窟に置き去りにされた、
まさにその時間だった。

『西のウタキを見に行ってきます』


……それにしても……、
その後の連絡が一つも無いって……、

どうにも、もやもやした気持ちの治まらない処にSPが駆け込んで来た。

昼食後、近くの繁華街で土産物を探していた事、
その最中、食材を届けてくれる青年に声を掛けられていた事、
二人がバスに飛び乗った為、追いきれなかった事、再度その青年を見付けた時、つくしは一緒では無かったと……、
結局、電話は繋がらなかった。


………アイツか……


「……類様、心当たりが?」

「………間違いない、アイツだ」

「ご一緒致します」

「悪いね、田村」

「いえ、データと指示は全て送りましたので」



ここ数日間の牧野とコイツの接点を思い返し、
俺を見る目、牧野を見る目を思い返し、
SPからの報告を聞き、別荘ではなく槐の元を訪れダイレクトに問い質した。
やけにあっさり牧野の居場所を吐いたと思ったら、これだ。


「牧野を何処に置いてきた…」

「……『ニシ』の洞窟」

「………………………」

「早く、行ってやりなよ。満潮時間が近いよ」

「……何?……」

「あそこ、満潮になると出られないんだよね」
「………行きはヨイヨイ、帰りはコワイってヤツ?」

「……っ!お前っ!」

「………可哀想……」


!!!


「あっ、思い出した?花沢さん」
「つくしちゃんだっけ?、彼女には恨みも何も無いけどね、………可哀想に……」


焦りを抑えて、あらゆる感情を抑えて槐の元を訪れたが、
一瞬にして吹き出す怒り。
瞬間的に間合いを詰め、締め上げ拳を入れた。


***


「あんたのした事は犯罪になりかねないって言ってんだよっ!!!」

「あん時の、あんた達と同じだな」


あの頃の俺たちがやってしまった事を、許して欲しいなんて今更言える筈も無い。
コイツの気持ちも判らなくも無い。

……だが、ターゲットが違うだろっ!


………………………バキッ………………


類は、もう一度自身の気持ちを鎮めるかの様に、
槐の顔面に拳を振り下ろした。


「………で、あんたの気は済んだ?」

「……………くっ…………」

「牧野が無事に戻るまで、そこで祈ってな」


「…後を頼むね」


有らん限りの力で締め上げていた槐を投げ棄て、後ろのSPに告げた。


つくし、つくし、つくしっ!
どうか、無事でいますように、
どうか、間に合いますように。


槐に振り下ろした痛む手をきつく握りしめ、
類は走った。


***


「『ニシ』の洞窟に急いで!」

「『ニシ』ですか?」

「あぁ、アイツ『ニシ』の洞窟って言ってた」

「類様、それは『西』では無く『北』ではないですか?こちらでは、『北』の事を『ニシ』と…」

「くそっ!……あの野郎…」


もしもの事など考えて無かったけど、信頼の置けるSPを連れて来て良かったと、今は思う。
時間を確認すれば、満潮の時間にあと僅か、
日中の太陽は西に隠れ、街灯も無い。
周囲は、月明かりのみ。

………間に合うか?


「………類様、これ以上近付くのは危険ですっ」

「くそっ!あそこにつくしが居るんだっ!」

「類様っ!!危険ですっ!」

「そこにつくしが居るんだよっ!」


牧野が置き去りにされたその場所は、
満潮になるとぽっかり開いた洞窟の入り口が半分以上隠れる。
大潮の時はさらに、潮で満たされるという、
咄嗟に空を見上げれば幸い今日はそれでは無いが、
どれ程の海水が入り込んでいるのか?想像すら出来ない。

どれほど不安になっているだろうか?
少しでも高い所に居てくれるだろか?
洞窟内の複雑な流れに翻弄されてはいないだろうか?

叫んでも叫んでも、自身の声は波に呑まれて届く筈も無く、
牧野の声も、聴こえはしない。


ザッ!!


「っ!類様っ!!」

「必ず戻るからっ、待機しててっ!!」


波打ち際の声を無視して海に飛び込んだ、
……必ず、助ける。

洞窟付近の複雑な潮の流れに揉みくちゃにされながらそこを目指す。
入り口近くで急に吸い込まれる様にたどり着いた。

………行きはヨイヨイってか?

入り口の岩に手を掛け呼吸を整えると同時に
視界に入る牧野が履いていたサンダル。

そのサンダルが俺の目の前で、大きく円を描く。


「……つくしっ!!」

「つくしっ、返事してっ!!!」


「……つくっ「るいっ!!」」


月明かりが僅かに、しかも届くか届かない様な洞窟の中、少し慣れた目を凝らせば、
寄せる波の中に突き出た岩に懸命にしがみつく彼女を認めた。


「つくしっ!そこを離れないでっ!」

「るいっ」

「今、行くからっ!」


洞窟内に潮が入り込むタイミングを計り、身を任せる。
突き出した岩に掴まりつつ、目一杯伸ばされた彼女の手を目指した。


「……るっ……い……」

「つくしっ!」


僅かに触れたその指先を互いに手繰り寄せ、腕の中に彼女の身体を抱き込み、流れに任せて洞窟の奥へ進んだ。
夏とはいえ、陽の射さない洞窟内は温度が低い。
どれ程の時間海水に浸かっていたのか?
彼女の身体は、冷たかった。

早く、水から上げないと……

天井にぽっかり空いた穴から半分の月が見える、大分奥まで来てしまったが、これで海水から出られる。
満潮の波が届かない洞窟の奥、濡れた身体で座り込みお互いの無事を確認し合った。


「………類……、槐さん……が…ね」

「アイツに、何を云われた?」

「…………………」

「………ごめんな、俺達のせいだ……」


この状況でも、尚、言葉を選ぼうとする彼女をきつく抱きしめて、
潮が引いて砂浜から洞窟までの道が出るまでの時間を過ごそう。
アイツの事は、この洞窟を出てからだ。


「………類……」

「ん?」

「来てくれて、ありがとう」


……っ!あんたはっ……

再度、彼女の身体を抱きしめ直して、
こうして体温を分け合える事に感謝した。





Rendez-vous demain...


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12:00  |  vacances d'été【2017 Summer】  |  CM(6)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

よかったよかった。
助かるってわかってるんだけど、
ドキドキしましたわー。
海に飛び込む類くん
岩にしがみつくつくしを助ける類くん
カッコよかったです(≧▽≦)♡
空色様のアクティブなお話新鮮でした♡
小話も可愛かったです。
つくしに身を任せる類くん♡
耳かきしてるだけなのに、
こんな甘い空気を作りだしちゃうふたり
いいなぁ♡
お話ありがとうございました(*^^*)♡
さとぴょん | 2017.08.27(日) 01:51 | URL | コメント編集

●危機一髪😰

空色様💓
おはようございます❗
間一髪で類君洞窟に間に合ったけど、これからどうやって洞窟から出るのか…
二人の運命は…みたいな⁉
まだまだリレー続くのに助からない訳がない❗
でも、どうやって満潮で海水が一杯の洞窟から出て来るんだろう?
キム | 2017.08.27(日) 09:53 | URL | コメント編集

●ありがとうございます(*^.^*)

さとぴょん さま
ありがとうございます(*´∀`)♪
類をちゃんとアクティブに書けてたでしょうか?
普段、まったりノロノロの類しか書いてないので、難しかったですー(^_^ゞ
取り敢えず、つくしを抱え込んで………うふふ(´∩∩`)
続きは、アキさんがたっぷり(←何を?)です♪
拍手小話にもコメントをありがとうございます。
二人でペッタリくっついて、お耳こしょこしょ♪です。
ありがとうございました。🍀
空色 | 2017.08.27(日) 18:23 | URL | コメント編集

●ありがとうございます(*^.^*)

キム さま
ありがとうございます(*´∀`)♪
類、何とかつくしの所までたどり着きましたっ!
あとは………うふふのえへへ(´∩∩`)です。
アキさんにバトンタッチですが、上手く繋げられたかな?
心配です(^_^ゞ
ありがとうございました。🍀
空色 | 2017.08.27(日) 18:30 | URL | コメント編集

空色さんこんばんは!
ご無沙汰しております
ハラハラしましたよ~💦💦 
でも類君頑張ってくれましたね~!
空色さんの頑張りで類君も頑張ってくれたのですね!
そりゃ、陽の当たらない海水にずっと浸かっていては冷え冷えですね、早く服を脱がないと!っと続く…でした(笑)
耳掻きゴニョゴニョがまた妙にエロへの序章でした(笑)
今頃コメすみません!
間に合って良かったです~💦💦
ずき | 2017.08.30(水) 20:42 | URL | コメント編集

●ありがとうございます(*^.^*)

ずき さま
ありがとうございます(*´∀`)♪
ハラハラして頂けましたか?
良かったぁ~♪
普段、マッタリ類とノロノロ空ですから、難しかったです💦
そうそう、二人共に全身ずぶ濡れなのでね♪
冷え冷えです……(´∩∩`)
耳掻きも……二人のイチャイチャです、きりっ!
ありがとうございました。🍀
空色 | 2017.08.30(水) 21:57 | URL | コメント編集

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