夢見月~Primavera~

いろいろ妄想中(´▽`*)♪



Calender

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プロフィール

聖

Author:聖
夢見るオトナ目指してます
いつまでも恋していたいね

・゚・。+☆+。・゚・。+☆+。

二次小説を書いてます。
【花より男子】
花沢類がスキ♡(*ノ∀ノ)

他にもボルテージ系の女子ゲーネタで書く予定!

原作者様及び出版社様、ゲーム開発者様とは一切関係ありません。

無断転載や複製、配布は許可していません。

 あくまでも『二次小説』であることをご理解の上、ご覧くださいませ"○┐ペコッ


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Tranquilizer 35

その頃、アベルとジェラルドは病棟の待合スペースで並んで座っていた。
戻ることを頑なに拒否するアベルに、ジェラルドは物静かな口調で語りかける。
『私はハナザワの先代が初めてフランスに支社を出した時からのご縁なんだ。
 ルイ様とは今日初めてお会いしたが、本当に亡くなった奥様にそっくりじゃな』
『…ああ、そうだな』
『お前さんとルイ様がどんな関係なのかは知らん。
 ルイ様も、いきなりそんなことを言われて困っているだろう。
 だが、ワシが思うに、ルイ様もツクシ様も、お前さんを見殺しにはせんよ。
 お前さんだって、あの家の被害者なんだからな』
ジェラルドの言葉に、今は亡き母の言葉が蘇る。


『貴方の本当の父親はジャン=ジャック・ジダンよ。
 私は絶対に、あの男を許さない。
 あの男は人を人と思わない、勝手な男なんだから。
 いくら本当の父親だからって、貴方はあの男に近づいてはダメよ。
 貴方を産んだことを後悔したことはないけど、父親があんな男だなんて…』


亡くなる直前に聞いた、自分の出生の事実。
両親は仲のいい夫婦で、祖父から受け継いだ会社を経営していた。
その会社の業績が傾き始めた頃、ジダン家から援助の申し出があったという。
その当時、既にジダンの実権はジャンが握っており、援助はジャンからの申し出だった。
祖父から受け継いだ会社を立て直すことに必死だった父はその話に飛び付き、ジダンからの援助を受けた。
が、ジャンの目論見は業績を立て直すことではなく、会社自体を潰すことだった。
一時的に業績を上向かせ、そこから叩き潰すかのように倒産へと追い込む。
同じような末路を辿った会社がいくつもあるとの噂を聞いた母は、堪らずジダンへと直談判に行った。
しかし担当者は偶然だと言い張り、その事実を認めることはなかった。
そして、案の定、会社は倒産寸前まで追い込まれてしまう。
居た堪れなくなった母は、再びジダンの元を訪れた。
そこに現れたのはジャン自身で、母を見るなり下卑た笑みを浮かべた。

『気の強い女は嫌いじゃない。
 どうしても、というなら、それなりの覚悟はあるんだろう?』

その時、母は初めて自分の愚かさに気付いたという。
しかし時は既に遅く、ジャンは母を無理矢理押し倒すと、悪魔のような囁きを落とした。

『夫のため、会社のため、と思うなら、これくらい何てことはないだろう?
 さて、今日の獲物はちゃんと俺を楽しませてくれるのかな…』

男の腕力に敵うはずもなく、大声で助けを求めた母に、ジャンはククッと笑う。

『助けなんて来るはずないだろう?
 …ま、すぐに違う啼き声をあげさせてやるから』
『…何でこんなことっ!
 会社を助けてくれるんじゃ…』
『助ける?何でそんなことしてやらなきゃいけないんだ?
 あんなの、ちょっとしたゲームみたいなもんだろ。
 誰かの力を借りなきゃやっていけないような会社は潰れて当然だ。
 その見切りが付かないヤツが多いから、その手助けをしてやってるだけ。
 ま、時々お前のような女が乗り込んでくるから、お礼代わりに楽しませてもらってるけどな』

母が必死の思いで泣き叫び、どんなに助けを求めても、その扉が開くことはなかった。
ジャンは自分が満足するまで何度も母を貫き、中に放った。
そして、ボロボロになった母に、捨て台詞を残して去っていった。

『帰ったら、また旦那に抱いてもらいな。
 じゃなきゃ、ガキがデキてた時、言い訳できないだろ?
 言っとくが、お前程度の女とのガキはジダンには要らないから。
 それが嫌なら産むな』

振り返ることなく出ていく背中に、殺意を覚える。
が、抱き潰された体は思うように動かなかった。


そして、その数か月後、アベルを身籠った。
間違いなく、ジャンの子供…しかし、その事実を夫へは話せなかった。

―この子は愛する夫の子供…

そう自身に言い聞かせ、夫の子として育てた。
その数年後に弟も生まれ、家族4人の幸せな日々を送った。
母自身も、アベルは本当に夫との子供なのかもしれない、とさえ思っていたが。
その望みは呆気なく覆されてしまう。

それはアベルの血液型だった。

その現実を目の当たりにした時、父は母を酷く罵倒し、弟すらも別の男の子供なのでは、と疑った。
その時の様子はアベルにも朧げに記憶があった。
何が原因で喧嘩をしているのかはわからなかったが、父が酷く怒っていたことは鮮明に覚えている。
それが自分の出生のせいだったなんて。
その事実を知った時、アベルは初めて、生まれてこなければよかった、と思った。

程無くして両親は離婚、弟は父に引き取られ、アベルは母と一緒に家を出た。
そしてその数年後、母は病魔に侵され、この世を去った。
父と弟にも連絡はしたが、どちらとも葬儀には来なかった。


―俺たち家族を壊したヤツに復讐を。


その一心で勉学に励み、ジダンの系列会社へと就職を果たす。
ひたすら真面目に働き、それが認められジダンの邸に出入りできるようになった。
ジャンの厳命に口添えをするようになり、その成功報酬としてジャンの側近としての地位を確立した。

どうやって復讐を果たすか。

殺すくらいじゃ生温い。
ジャンだけではなく、ジダンそのものの消滅を。
幸い、ジャンにはアベル以外の息子はおらず、ジャン自身はアベルが息子だとは思っていない。
しかし、後継問題が頓挫したとしても、最悪は分家から当主を選ぶことになる。
ジダンを潰す方法はないのか…。
そう思い始めた矢先、腹違いの妹の子供に後を継がせる話を耳にした。
それも、その男はあのハナザワの後継だという。

ハナザワにジダンの財産を吸収させるか?

しかしその思惑も、後継をあっさり拒否されたことで霧散する。
何かいい手はないものか。
そこで浮かんだのは、ジダンの消滅ではなく、ジダンを乗っ取ること。
アベル自身を息子と認めさせれば、必然的に後継の筆頭になる。
ジダンの実権さえ握ってしまえば、後は何とでもなる。
年老いた爺さんには早々に逝ってもらって、後は…。

類を連れ戻すことができなかったことの報告よりも先に伝えなければ。
アベルはジャンへ電話を掛け、エレーヌとアリーシャ以外にも子供がいた事実を伝えた。
自分がその子供であることは告げずに。
しかし―。

『アベル、その子供はお前だろう…そんなことは当の前から知っておる。
 だが、お前を後継にすることはない。
 お前の母親にも言ったはずだ、あの程度の家柄の女の子供など、ジダンには必要ないと。
 まぁ、お前は儂の子供だけあって優秀だったが、それも今日までだ。
 生きようが死のうが勝手にしろ。
 それよりも、ハナザワのクソガキはどうした…ちゃんと連れて来るんだろうな?』

ジャンの不遜な物言いに、笑いが込み上げる。

知ってたって?
知ってて雇って、こき使ってたって?
息子だって知ってるのに、母親の家柄だけで後継にはしないって?
それでもなお、ハナザワのクソガキを連れて来いとか、ふざけてんの?

『フ、ハハ…ハハハハッ…!』
『貴様…』
『アハハッ…だって、おかしいでしょ?
 息子だけど用無しで、それでもあの男連れて来いとか、あんた正気で言ってる?』
笑いの止まらないアベルに、ギリッとジャンの歯軋りが聞こえた気がした。
『あの男はジダンは継がないってよ。
 そりゃそうだよな、息子の俺だって、あんたの後なんて継ぎたくねぇし』
『貴様、誰に向かって…』
『誰?ジャン=ジャック・ジダン様だろ、知ってるよ。
 昔、ゲーム感覚で小さい会社潰しまくって、縋ってきた女をレイプして。
 もしかすると、俺みたいなヤツ、ゴロゴロいるんじゃない?
 けど、元々あんたはクリーンなイメージなんてないし、痛くも痒くもないでしょ』
何とか笑いを治め、ふうと深く息を吐く。
言いたいことは山のようにあるが、そんな時間は無駄でしかない。
言ったところで、この男には何の意味も成さないのはわかっている。
『邪魔なら消したら?いつもみたいにさ。
 あ、でもちょっと時間くれるかな。
 俺も遺言くらい書きたいし…変な死に方したらあんたのせいだって、ちゃんと書いとかないとね』
『…ふんっ、勝手にしろ!』
ブツリと切られた通話に再び笑いが込み上げる。
『あー、おっかし…最後に大笑いできてよかったわ。
 けど、もう笑ってる場合じゃないよな…』
緩んだ頬を引き締め、空を見上げる。

―ハナザワのクソガキを動かすために、じーさんが考えそうなことは…

やりそうなことはただ一つ。
標的は、アンティーブにいるクソガキの女。

『アンティーブか…何でそんな遠いとこにいるかね…』
そう呟きながら、空港へと足を向ける。
仲間からの情報で、今日は検診に行くはずだ。
ならば…。

携帯を取り出すと、ニースで待機中の仲間へと電話を掛ける。
『とうとうやっちまった…うん、じーさん、相当怒ってるね。
 けど、このままじゃ腹の虫が治まんないからさ、例の女、用意しといて』

そして、空港内の公衆電話から、つくしの受診先へも電話を入れた。
『ツクシ・ハナザワを狙ってるヤツがそっちに行くはずだ。
 気を付けないと大事になるぞ』
自分の名は名乗らず、それだけ言うと受話器を置いた。
後はアンティーブに行くだけ。
おそらくクソガキ共も向かってるはずだ。

―うまく会えたら、祝福の言葉くらい言ってやるか…

そんなことを考えながら、ニース行きの飛行機へと乗り込んだ。




アベルの話をただ黙って聞いていたジェラルドは、『ふむ…』と小さく呟く。
『こんな話、聞いたって面白くもなんともないだろ?』
自嘲を浮かべるアベルに、ジェラルドは何かを思い出すかのように眉根を寄せる。
『おい…聞いてんのか?』
『…昔、そんな噂を聞いた気がしてな。
 年を取ると思い出すのにも一苦労じゃよ』
『いや、別に思い出さなくてもいいんだけど。
 ま、そういうわけだから、俺は行くよ』
スクッと立ち上がったアベルに、ジェラルドは哀れみの目を向ける。
『お前さんはこのままでいいのか?
 その人生をきちんと全うしたのか?
 あの世で、母親に顔向けできるように生きたのか?』
ジェラルドの問いかけに、アベルは唇を噛む。
その手は爪が食い込むほどに握られ、怒りに体を震わせた。
『…このままでいいなんて思ってない。けど…俺には何も…』
『諦めるのか?このまま外に出て、人知れず消されるのも厭わないと言えるか?』
『……』
『お前さんの恨み辛みを晴らしてやれるとは思わん。
 じゃが、このままではルイ様やツクシ様にまで危害が及ぶ恐れがある。
 ワシらはそれを何としても阻止せんといかん。
 そのためにはお前さんの協力が必要じゃ』
ひっそりと交わされる会話を、時折聞こえる新生児の泣き声がかき消す。
あの子供たちは必死の思いで生まれ、懸命に生きている…数十年前の自分もそうだったように。
人は皆、生まれ落ちた瞬間から死に向かっているけれど、それが不幸なわけではない。
願わくば、その瞬間まで幸福に…誰しもが持つ希望だ。
―俺だって…
アベルはグッと奥歯を噛みしめる。
死にゆく過程に不幸な瞬間があっても、最期は恨み事を言わずに旅立ちたい。
誰かに奪われるのではなく、この生を全うしたい…生まれてきたことを喜べるように。

フッと体から力が抜ける。
握りしめていた手指が緩み、体の震えも止まった。
『赤ん坊の泣き声っていいな…希望に満ち溢れてて』
泣き声の聞こえる方向へと顔を向けたアベルに、先程までの苛立ちは感じない。
その瞳は見えない未来さえも見据えるかのように、強い意思を宿している。
『これまでの人生が無駄だったなんてことはない。
 じゃが、お前さんの気持ち一つで、この先の未来はいくらでも変えられる。
 誰かのためではなく、自分のために生きたいとは思わんか?』
どこまでも穏やかなジェラルドの声音に、アベルはフッと笑みを浮かべる。
これまでの嘲笑ではなく、穏やかな微笑み。
『そうだな…おそらく、死ぬまであの人への恨みは消えないと思う。
 けど、そればかりに時間を費やすのは勿体ないのかもしれないな』
『ああ。お前さんの母親だって、そんな生き方は望んでおらんはずじゃ。
 ならば、自分の思うように生きるのが最善じゃろう。
 これからどうするか、お前さんが決めるんじゃよ』

アベルは出入り口の自動ドアを見つめた。
あのドアを出た先で待っている運命を変えるなら、今決断するしかない。
その瞳をゆっくりと閉じ、そして小さく息を吐く、と。
『俺は…もう少し、生きていたい。
 そのためなら、何でもする。だから…』
アベルはジェラルドへと向き直り、その頭を下げた。
『おやおや、頭を下げる相手はワシではないじゃろう?
 とにかく、ここから無事に出るのが先決じゃ。
 そろそろ感動の再会も終わったじゃろうし、ワシらも行くかね』
よいしょ、とジェラルドは立ち上がり、奥の個室へと歩き出す。
その小さな背中が誰よりも頼もしく見えて、知らずと笑みが零れた。
『…不思議なヤツだな、あんたは』
その背を追うように、アベルもゆっくりと歩き出した。


遠のくドアをチラリと振り返り、その向こうで待つ運命に幸運があることを祈る。
そのための一歩を踏み出した自分を誇れるようにと前を向き、ジェラルドの後を追った。


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Tranquilizer | 2017/09/11 06:00 | コメント(0)






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