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Tranquilizer 48【完】

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CategoryTranquilizer

『誰が一番好き?』
そう問われ、グルグルと幼い思考を廻らせていた郁。

ママのことは大好き。
優しいし、ママの作ったご飯は美味しいし、絵本を読んでくれる。
怒ると怖いけど、ちゃんと僕の言いたいことも聞いてくれる。
けど、パパのことも大好き。
仕事でいないことも多いけど、早く帰ってきた日は一緒にお風呂に入ってくれる。
お休みの日はサッカーとかキャッチボールとかもしてくれる。
パパとママ、二人が一緒に笑ってるのを見てると僕もうれしい気持ちになる。
赤ちゃんのことは、よくわからない。
でも、僕はお兄ちゃんだから、守ってあげないといけない。
結局、一番なんて決められない。
でもパパ言ってた…無理に決めることじゃないって。
だから、みんな一番でいいや。

「いくくん。」
不意に声を掛けられ、顔を向けると。
「ゆーま?」
ニコニコと笑う優真を、郁は不思議そうに見た。
「それでいいとおもう。」
「え?」
「ぼくはパパとママ、どっちもすき。
 だから、いくくんもそれでいいとおもう。」
「…そっか。それでいいんだ。」
優真の言葉に、郁はニッコリと笑う。
「ぼくのパパはね、ママのこと、うちゅうでいちばんすきなんだって!
 ゆーま、うちゅうってなんだかしってる?」
「うちゅう?しらなーい。」
「そっかぁ…あ!ゆーまのパパにきいてみよ!」
二人は手を繋いで総二郎の元へと駆け出す。
そこには孝や司、あきらの姿もあった。
「ねぇねぇ!うちゅうってなぁに?」
「は?宇宙?」
「うん!あのね、パパがね、いったんだ。
 ママのこと、うちゅうでいちばんすきだって!」
「「「へぇ~…類がねぇ…」」」
ニヤニヤと笑う3人に、孝はフッと笑みを浮かべながら郁へと言葉を向ける。
「郁、そこの窓からお空が見えるだろう?」
「うん。」
「宇宙っていうのはね、そのお空全部のことをいうんだ。」
「「えぇ~~!!」」
驚きのあまり、目を丸くして声をあげた郁と優真に、孝は優しく微笑む。
「お空は広いだろう?
 その中でも一番大好きなのは、ママと郁なんだよ。
 優真君のパパもきっと同じだから、聞いてごらん?」
「こーくんのパパも?」
「そうだね。私はアリーシャも幸太郎も、そして郁のパパもママも、もちろん郁も、宇宙で一番大好きだよ。」
「そんなにいっぱい?」
「一番は一人じゃなくちゃダメってことはないさ。
 大好きな人がいっぱいいたら、それは幸せなことなんだと、私は思うよ。」
その言葉に、郁は目を輝かせて優真を見た。
「すごいよ!ゆーま!
 ゆーまのいったとおりだ!」
「うんっ!ぼくも、パパとママがうちゅうでいちばんすき!ね?パパ!」
ニッコリと笑う優真に、総二郎は相好を崩す。
「あぁ。パパも、ママと優真が宇宙で一番好きだよ。」
総二郎の手が優真の小さな頭を優しく撫でると、優真は殊更嬉しそうに微笑む。
「もう少しで帰る時間になるから、それまで遊んでおいで。」
「わかった!いくくん、いこっ!」
おもちゃのある方へと駆けていく小さな背中に、総二郎はクスッと笑みを零した。

「へぇ~、あの『西門総二郎』がねぇ…。」
冷やかすような声音に、一瞬バツが悪そうに苦笑いを浮かべる。
が、愛しい我が子が屈託のない笑顔を向けてくれれば、それは当然の感情なのだと思う。
「そう思える存在に出会えたってのは、男冥利に尽きるんじゃね?
 お前らだってそうだろ?」
チラと目を向ければ、その二人も満更悪くない、といった表情だ。
「だな。結婚なんて、家のためにするもんだと思ってきたけどさ。
 何だかんだでみんな、ちゃんと好き合った相手と結婚したよなぁ。」
「あぁ。宇宙一怖ぇ嫁さんと、宇宙一可愛い娘といる俺は宇宙一の幸せ者だな!」
悪びれる風もなくハハッと笑う司に、あきらは苦笑を漏らす。
「いいのかよ、そんなこと言って。」
「あん?事実なんだからかまわねぇだろ。それによぉ…。」
言いかけた言葉を不穏な声音が遮る。

「つ~~か~~さ~~!!!」

背後から聞こえたのは、司の『宇宙一怖い』妻の、地を這うような低音。
ギクリとした司はすぐさま口を閉ざすが、時すでに遅し。
「なっ…おまっ…!?」
「ちょぉ~っと、こっちでお話しよ~ねぇ~。」
「ちょっ!待てっ!さっきのは…!」
小柄な滋に引き摺られていく180㎝超えの大男に、二人は憐みの視線を向けた。

「何、騒いでんの?」
リビングの騒ぎに、類は小首を傾げる。
「お、類。遅かったな。」
「あー、ごめん。つくし寝かせてて遅くなった。」
「具合悪いのか?」
「うん。ちょっと疲れてたっぽいから、休ませてる。」
「大丈夫かよ?」
「まぁ、病気じゃないしね。」
その一言に、周りはピンときたようだ。
「類、それって…?」
「ん。デキてた。」
途端に歓喜の声が上がり、類も照れ臭そうに微笑む。
「総二郎の嫁さんに感謝しないとね。」
「そんなこと…。でも、ほんと、よかった…。」
優紀は安堵の息を吐きながら、口元を綻ばせる。
「次はどっちだろうな?
 あ!女の子だったら、うちの優真と…。」
「やだ。嫁にはやらない。」
「は?今からもう親バカかよ!」
呆れた総二郎の声に、あきらは類の肩をポンポンと叩く。
「わかる、わかるよ、類。
 俺も、嫁にやりたくねぇもん。」
あきらは自分によく似た二人の娘に目を遣り、切な気に溜息を吐いた。
「まぁ、まだどっちかわかんないけどさ。
 郁の時に一緒にいてやれなかった分、今度は郁と一緒につくしを支えるよ。」
類の幸せそうな声音に、その場にいる全員が一様に笑みを零した。



静まり返った部屋の扉を開けると、窓辺に佇む人影が見える。
「あ。起きた?」
ゆっくりと歩を進め、その身体を優しく抱き寄せる。
「寝ちゃってごめんね。みんなは?」
「もう帰った。郁は幸太郎と一緒に寝てる。」
「そっか。」
類の腕に身を預け、つくしはフッと小さく笑みを浮かべる。
その気配に、類も頬を緩めた。
「類は、あたしと一緒にいて、幸せ?」
「当たり前。もう、つくしがいないなんて、考えらんない。
 つくしは?違うの?」
類の問いかけに、つくしは小さく首を横に振る。
「あたしにとって、類はかけがえのない人だもん。
 類がいなかったら、たぶん生きていけない。」
「俺も。つくしと会う前の自分ってどうやって生きてたんだろ?って思うことがある。
 楽しいことなんて何もなくてさ。
 今日来たあいつらに聞けばわかるけど、俺、ほんと笑ってなかったしね。」
「そっかぁ。あたしは類の笑った顔ばっかり見てきたから想像できないけど。
 あ、でも、秘書室に異動したばっかの頃の類の顔、怖かったよね。
 取っつきにくいっていうか、近寄り難い雰囲気があったなぁ。」
クスッと笑ったつくしに、類はその頃のことを思い出す。
「つくしはいつも笑ってたね。
 あんたが来てから、秘書室の雰囲気がガラッと変わったって宮野も言ってたし。
 そんなあんただから、俺は好きになったんだと思う。」
フワリと触れた類の指がつくしの頬を撫でる。
その感触に、つくしはふふっと笑い、類を見上げた。
「つくしが変わったの見て、俺、けっこう辛かったんだ。
 父さんと結婚して、幸せに笑ってるんだろうって思ってたのに、あんた全然笑ってなくてさ。
 けど、俺といる時はちゃんと笑ってたし、リラックスもしてた。
 だから、よけいに気持ちが抑えられなくなったんだと思う。」
「今もだけど、あたしにとって、類は精神安定剤なのかもね。
 あの頃のあたしは笑いたくなくても笑っていないといけなかったし、溜息ひとつ吐くのにも気を遣ってた。
 そういうのが積み重なって、体調崩して、さ。
 あの時、類が一緒にいてくれなかったら、今のあたしはいなかったと思う。」
「俺にとっては、つくしは生命維持装置みたいなもんかな。
 いなくなった途端に、息、止まるかも。」
「それじゃ、ずっと一緒にいないとだね。」
類の胸元に耳を当て、その鼓動に耳を澄ます。
トクン、トクン、と規則的に打つその音に、つくしは安らぎを覚える。
「それこそ、当たり前でしょ。
 これから新しい家族も増えるんだし。
 その後も、増やしたいし、ね。」
「え…?」
驚いて目を丸くしたつくしに、類はクスッと笑う。
「幸せ倍増計画?」
「ぷっ…何それ!」
可笑しくて吹き出した笑顔は幸せそのもので。
その口元にチュッと小さなキスが降る。

「ずっとずっと、愛してくから。」
「うん…宇宙一幸せな夫婦になろうね。」
「もう、なってる。」
「なら、もっと…。」
「ん。」

クスリと微笑み合い、寄せた唇に想いを込める。

出会えた幸運と、未来の幸福を、共に。



Fin.


☆--:*:--☆--:*:--☆--:*:--☆--:*:--☆


やっと終わった…(´▽`) ホッ
一応、これにて完結。

途中、更新が滞ることが多くて、本当にすみませんでした。
書き始めた当初は、ここまで長くするつもりはなかったんですけどね(笑)
ま、何はともあれ、終わってよかった。

長々お付き合いくださって、ありがとうございました(´▽`*)♪


皆さまからのコメントや拍手、本当にありがとうございます♪
現在、ブログランキングは休止中。
定期的に更新できるようになったら再開する、かも?

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10 Comments

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2018/02/01 (Thu) 23:58 | EDIT | REPLY |   

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2018/02/03 (Sat) 01:56 | EDIT | REPLY |   

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2018/02/03 (Sat) 16:37 | EDIT | REPLY |   
聖

聖  

ky**o様

こんばんは。
最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございます。

不穏な書き出しに、悲恋も予想できますよね。
けど、私はハピエン至上主義なのでご安心ください(笑)
略奪愛なのに、そこまでドロドロ感がないのは私の技量不足です(^▽^;)
いろいろモブキャラも多く、途中で収拾がつかなくなったのは秘密です(笑)

私の拙いお話にワクワクドキドキしていただけたなんて、光栄です!
無事完結を迎え、このような素敵なコメントをいただいただけで、書いてよかったな~と思っております。

コメントありがとうございました。
こちらこそ、よろしくお願いします。

2018/02/04 (Sun) 19:57 | EDIT | REPLY |   
聖

聖  

ま**ん様

こんばんは。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

書き始めた当初はここまで長くなる予定ではなかったのですが。
展開を紆余曲折させすぎてハラハラさせてしまったかもしれませんが、それもいいスパイスになったんじゃないかと思います。
が、読んで辛い思いをさせてしまったことは申し訳ありませんでした。

最後はみんなハピエン、なんて都合がよすぎる気もしましたが、素敵なハッピーエンドだったと言ってもらえて嬉しいです。
幸せな家族像はそれぞれに違うかもしれませんが、こういうのもいいんじゃないかな?と。
ま**ん様の心が、少しでも温まったのなら幸いです(*^-^*)

コメントありがとうございました。

2018/02/04 (Sun) 20:15 | EDIT | REPLY |   
聖

聖  

mi****ma様

こんばんは。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

何とも突飛な設定を思いついたものだと自分でも思います(笑)
ですが、類とつくしが惹かれ合うのが大前提にありますので、そこは心配ありません。
読み返すといろいろボロに気付かれるかもしれませんが、細かいところはスルーしていただけると嬉しいです(^▽^;)
素敵なお話、という言葉、本当にありがとうございます!

コメントいただき、ありがとうございました。

2018/02/04 (Sun) 20:22 | EDIT | REPLY |   

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2018/02/16 (Fri) 12:43 | EDIT | REPLY |   
聖

聖  

ず*様

こんばんは。

何とか完結することができました。
仰る通り、途中何度も挫けそうになりましたが💦
畑違いの分野のお話はなかなか難しいです(^▽^;)
皆さんの応援がなかったら完結まで書けなかったかもしれません。
本当に、ありがとうございました!

もう書くのはやめようかと思ってたんですけどね。
実は、今もお話は書いてます(笑)
公開するかはわかりませんがね(笑)
やっぱり類とつくしのことが好きなんですよね~

たまには読み返すのもいいですよね。
ぜひ堪能していってください(*^-^*)

ありがとうございました(´▽`*)

2018/02/17 (Sat) 00:34 | EDIT | REPLY |   

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2018/07/05 (Thu) 23:03 | EDIT | REPLY |   
聖

聖  

木**な様

こんにちは(*^-^*)
お久しぶりですね!
また来て下さって、ありがとうございます♪


コメントをいただいて、久々に読み返してみました。
いろいろぶっ飛んだ設定で、よくまぁ…と自分に呆れましたが(笑)
けど、私もこの話の孝は好きです。
大らかで包容力があって、でも情熱的で。
当初は類と対極のキャラ設定でしたが、最後は似た者親子になってましたね(笑)
孝派って言っていただけたのは、嬉しい誤算でした( *´艸`)

というか、このお話がきっかけってびっくりなんですけど!💦
何だか、おこがましい…けど、嬉しいです!
私もとある作家さんのお話を読んで二次を書き始めたので、気持ちはわかります!
が、私の話がきっかけになるなんて、思ってもみませんでした。

書いてる時はう~~~んって唸ることも多いですが、書き終わった時の満足感がクセになりますね。
今もまだ書いてる途中の話も、今は辛い時期ですけど、ちゃんとやり遂げたいと思います。
木**な様の言葉で、またやる気が出ました!ありがとうございます!


明日からのリレー、楽しみにしていてください。
そして、いつか木**な様もご一緒に♪


ありがとうございました(´▽`*)♪

2018/07/06 (Fri) 11:41 | EDIT | REPLY |   

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