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Lesson - The 1st unit - sec.2

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CategoryLesson

「まったく!何度言ったらわかるんだい!」

先輩の怒号に、周りの使用人たちは申し訳なさそうにあたしを見つめる。
それもそうだろう…今、あたしがやっているのは…。

「ご不浄っていうのはね、その邸の品格を表す場所なんだよ。
 常に清潔に保つことでお家の品位が上がり、ますます発展すると言われている。
 そんなことも知らないのかいっ!」

そんなこと知らないし、学校でだって教えてはくれなかった。
確かに牧野の家のトイレはいつもきれいだったけど、それはお仕えの人がやってくれてたからなぁ。

知らずと漏れた独り言に、先輩は溜息を漏らす。

「確かに、つくし様は類様に嫁がれる御身。
 かようなことは使用人に任せておればよいお立場じゃ。
 つくし様は英徳に通われておいでならば、通り一遍の作法や教養はお持ちじゃろう。
 であれば、ハナは英徳では教えておらんことをお教えするまで。
 旦那様が安心して仕事できるよう、邸を守るのが奥方であるつくし様の務めじゃ。」

先輩の言葉に、居た堪れない気持ちになる。
掃除や洗濯、ご飯を作ってもらったり、繕い物をしてもらったり。
今まで、あたしはどれだけみんなに頼って生きてきたのだろう。
きっと、みんな、今のあたしみたいに、指先を赤くしながらやってくれてたんだ。

「ありがとうございます、先輩。」

たぶん、これからも、あたしは誰かに頼りながら生きていく。
けど、それは当然のことじゃない。
それを教えてくれたのは、この人だ。
確かに人生の先輩…ちょっと考え方は古いけどね。

「わかったんなら、さっさと手を動かす!
 次は広間の掃除だよ!
 その前に、類様のお茶の準備も忘れるんじゃないよ!」

「はいっ!先輩!」

クスッ。
何だか、ちょっとだけ、楽しくなりそう。




類のお茶の準備をしている時も、先輩の厳しい突っ込みが入る。
けど、それは愛情の裏返しなんだって思えて、自然と受け入れられた。

でも、類は違ったみたい。


「どうしたの?その手…」
お茶の準備をするあたしの指先に、類の視線が刺さる。
「あー、大丈夫。ちょっとあかぎれ?」
「何でそんなことになってんの?」
「んー…さっきまでトイレ掃除してたから?」
「…は?」
「そんなことより、はい!お茶!
 この後、リビングの掃除に行かないとだか、ら…」
お茶を置いたあたしの手を、類の大きな手が包む。
「そんなこと、しなくていい。」
「でも…」
「類様、甘やかしてはなりません。
 つくし様はこのハナが立派な奥方に…」
「あんたは黙ってて。
 手、見せて…何か、指先、傷だらけじゃない?」
「あー、これは、ね…お針の練習した時に…」
気まずくて、手を引っ込めようと思うのに、類の手がそうさせてくれない。
「針?刺さったの?痛かったでしょ?」
「そりゃ、ね…でも、あたしが下手くそなのが悪いんだし…」
「そういう問題じゃないよ。
 つくしは俺の奥さんになるんだから。
 この身体が、たとえ爪の先だって、傷付けるのは許さないよ?」
ジロリ、と先輩を見つめる類の視線が怖い。
が、先輩はそんなことは気にした風もなくて。
「必要だと思ったからお教えしたまででございます。
 この年寄りに教えて差し上げられるのはこの程度のこと。
 ご不要とあれば、私なぞ…」
「ま、待って!類!
 あたしね、まだまだ先輩に教えてほしいことがあるの!
 類の服のボタン付けたり、類にご飯作ってあげたり、したい。
 今、先輩から教わってること全部、類のためだって思ってる。
 あたし、類のお嫁さんに相応しい人になりたいから!」

必死、だった。
先輩は厳しいし、口は悪いし、杖振り回すし。
もう隠居してもいい歳なのに、全然元気だし。
でも、先輩は何一つ間違ったことを言ってない。
あたしに必要だから、教えてくれてた。
だったら、あたしはそれを学ぶべきだって。

必死に、訴えた。

ハァ、と類の溜息が聞こえる。
呆れられちゃったかもしれない。
でも、それでも、あたしは…。

「ほんと、つくしってバカ正直っていうか、真っ直ぐっていうか。」
フワリと、類に引き寄せられ、その腕に囲われる。
「ごめんね、でも…」
「言い出したら聞かないの、わかってるから。
 つくしが思う通りにやっていいよ。
 けど、この手も、この髪も、この唇も。
 俺のために、ちゃんと手入れして?
 それと、ちゃんと休憩してよ…疲れた顔はつくしには似合わないから。」
「類…」
「あんた…ハナ、だっけ?
 あんまつくしに無理させないで。
 こいつ、一生懸命だからさ、やれって言われたらとことんやっちゃうタイプなんだよ。
 時間はあるんだしゆっくりでいいからさ…つくしから笑顔を奪わないで。」
背中に回っていた手が、優しくあたしの頭を撫でる。
そこから類の気持ちが伝わってきて、何か自然と涙が出た。
「…承知しました。
 では、本日はここまでといたします。」
「ん。頼むね。」
背後で扉の閉まる音が聞こえて、先輩が出て行ったのがわかった。




頬に触れる温もりに、重い瞼を持ち上げる。
「あ、れ…あたし、寝てた…?」
気付けば、そこは類のベッド。
肩まで掛かった掛物から、類の匂いがする。
「くす…よく寝てたね。
 相当疲れてたんじゃない?」
「どうだろ…わかんないや…」
類の手が気持ちよくて、フワフワと夢の中にいるみたい。

掛物の端がピラっと捲られて、その隙間から類が忍び込んでくる。
と、再び、あたしは類の腕の中。
「もうちょっと寝る?」
「んー…」
類の胸に頬ずりをすると、頭の上で類が笑ったのを感じる。
それが何だか嬉しくて、あたしも類の背中に腕を回した。


「ねぇ、つくし…」
「ん?」
「キス、しよっか?」


その一言で、あたしはガバッと身体を起こした。
「な、なな、…っ!」
「イヤ?」

イヤ?
イヤなわけ、ないけど…けどっ!

「ま、ママが!…赤ちゃんは、学校卒業してから、って…!」
「ん?何それ?」
「だ、だって!き、キスしたら…赤ちゃんできちゃう…んでしょ?」

恥ずかしいっ!
今まで考えたことがなかったわけじゃないけど。
でもまだ結婚式もしてないし、正式に奥さんになったわけでもないしっ!
それなのに、赤ちゃん、なんて…。


…またダダ漏れてたんだろうか。
途端に、類の肩が揺れ始め、クックッと笑い声が漏れる。
「類っ!?笑い事じゃ…っ!」
普段あんまり笑わないくせに、一度スイッチが入ると止まらなくなる。
だからって、こんな時に笑わなくってもいいじゃない!

「もういいっ!
 あたし、自分の部屋に戻るっ!」

類の背中をバシッと叩いて、あたしは類の部屋を飛び出した。



自分の部屋へと戻る途中。
「…おや?お目覚めかい?」
何で寝てたのがわかるんだろう?と思いながらも、先輩へと頭を下げた。
「先輩!さっきは、すみませんでした!」
「何だい、そりゃ。
 私ゃ、目の前でラブシーン見せられて、そっちの方がよっぽど気まずかったんだがね。」
先輩の柔かな口調に、本当は優しい人なんだなって思う。
じゃなかったら、優美おば様が選ぶはずないもの。
「しかし、つくし様。
 いいのかい?類様を放ってきて。」
チラリと類の部屋の方へと目を遣った先輩に、あたしは。
「せ、せんぱ~~~いっ!」
抱き付いて、泣いた。


泣き喚くあたしを、先輩は自分の部屋へと入れてくれた。
そして、事の顛末を聞いた今、明らかに呆れている。
「接吻だけで子が成せたら、こんなご時世になっとらんだろうな…」
ハァ、と深い溜息を吐くと、徐に立ち上がる。
「せ、んぱ…?」
「まぁ、つくし様は幼稚舎から英徳だったようだが、こういうことを教えてくれる人はおらんかったのかねぇ。
 こんなババアがそこまで教える必要があるとは思わんかったよ…」
何やら鞄から取り出すと、あたしの手にそれを渡した。
「…『正しいセックスのすすめ』?」
「つくし様、接吻だけでは子は成せん。
 その先の行為をしても、必ずデキるとも限らん。
 昔はコウノトリが運んでくるとも言われたが、それもまた迷信。
 必要なのは、時期とタイミング、そしてお互いを大切に思う気持ちじゃ。
 そういうことがそこに載っとるから、読んでみたらいい。
 わからんことは、類様に聞きなされ。」
「けど…っ!」
「類様はきちんとわかってらっしゃる。
 つくし様をずっと大切にしてこられたんじゃろ?
 そんな下世話なことが耳に入らんように、な。」
目尻の皺を濃くし、先輩は慈しみの笑みを浮かべる。

半信半疑のまま、手元の本を見つめる。
キスだけじゃ赤ちゃんはできないのは本当なんだろう。
けど、じゃあ、どうしたらできるんだろう?
それがここに書いてあるのか…と、本の表紙を捲ろうとした、瞬間。


バンッ!


「つくし!」


突然開いた扉から、あたしを呼ぶ大きな声。
そして、気付けば、また…。

「…る、い?」
「ごめんっ!」

その腕の強さが、あたしの心まで締め付けてくる。
あたしを抱きしめながら、類は何度もごめんと呟いた。

「…まったく、何をしてらっしゃるのか。
 続きはご自分の部屋へ戻ってからにしておくれよ。」

ドサリとソファへ腰を下ろし、ズズッとお茶を啜る音が聞こえる。

「先輩…ありがとうございました…」
「いいから、さっさとお行きよ。
 ああ、その本は返さなくていいからね。」


先輩からもらった本を胸に抱いて、類と一緒に部屋へと戻る。
「何もらったの?」
「ん…この本…」
それを類に見せる、と。
「すげ…そんな本もあるんだ…」
感心したように目を丸くした、と思ったら、それをひょいと取り上げられた。
「あっ!」
「こんな本じゃなくて、俺がちゃんと教えるから、ね?」
クスッと笑った類が何だか嬉しそうに見える。
「…わかった。
 あ、類…さっきは、その…ごめん、ね…」
「俺も、ごめん。
 つくしが可愛いこと言うもんだから、つい、ね。」
「だって…本当にそう思ってたんだもん…だから…」
「ん。で?わかった?」
「うん…キス、だけじゃ、赤ちゃんはデキない、のは…わかった。」
恥ずかしくて、類の顔がまともに見れなくて。
上目でチラッと見上げる、と。
「…その顔は反則。
 けど、わかったんなら…いいよね?」
カァっと顔が熱くなって、あたしは頷くことしかできない。
その瞬間、類の手があたしの手をギュッと握った。

「行こ…早く。」

手を引く類の耳が赤かったことが、何だかちょっと嬉しかった。


☆--:*:--☆--:*:--☆--:*:--☆--:*:--☆


ご存知かもしれませんが。
Unit:単元
sec.(セクション):節

『Lesson』なので、何となくこんな感じにしてみてました。
『Unit』は何とな~くな感じで決めてます(笑)
1Unitが長めな時だけ、sec.で区切る感じ。

超恋愛初心者なつくしちゃんの、恋のLessonn。
その先生は当然類くん、でしょ(笑)

これからどんな風にステップアップしていくのか。
お楽しみに~♪


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4 Comments

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2018/02/24 (Sat) 12:39 | EDIT | REPLY |   
聖

聖  

さ*様

こんにちは。
ようこそお越しくださいました(*^-^*)

花男大好き、花沢類大好き、大歓迎です♪
ドラマの小栗君はハマり役でしたね~
他のキャストは思い付きませんもの。

さ*様の理想とする類くんが我が家にいたとは驚きです💦
文章とか表現とか、まだまだ拙い部分も多いとは思いますが、よかったらまた来てくださいね。

数はそれほどありませんが、原作寄りのものあれば、パラレル系もあります。
お気に入りを1つでも見つけてもらえたら嬉しいです♪

これからも我が家の類くんとつくしちゃんをよろしくお願いします(´▽`*)♪

2018/02/24 (Sat) 15:01 | EDIT | REPLY |   

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2018/02/25 (Sun) 01:48 | EDIT | REPLY |   
聖

聖  

ず*様

おはようございます(*^-^*)

キュンキュンしてもらえて、うれしいです♪
いつもより少し長めにしてますが、大丈夫でしょうか?

周りからいろいろアドバイス?をもらいながら、これからも類君とLessonしていきます!
そっと見守ってあげてくださいね(^_-)-☆

ありがとうございました(´▽`*)♪

2018/02/25 (Sun) 08:50 | EDIT | REPLY |   

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