Be with you...《Cap.37》
ー…ピンポーン
来客を知らせるインターホンが鳴る。
ディスプレイには類の姿。
それを確認して、玄関へと向かう。
ドアを開けると、そこには穏やかに微笑む類がいた。
「お疲れさま…って!ちょっと!類!」
気がつけば、類の腕の中。
びっくりして顔を上げたつくしを覗き込む、ビー玉の瞳。
「おかえりなさいのチューは?」
悪戯っ子のようなその笑顔に、つくしの頬が赤らむ。
そして、その唇にキスが降る。
「ただいま」
優しく、しっかりと抱きしめられ、この場所の居心地の良さを実感する。
「つくしに早く会いたいから、急いで仕事終わらせてきた…偉いでしょ?」
「うん…ありがと。あたしも、類に会いたかった」
素直な気持ちを伝えられるのが、こんなに幸せなことなんだと知る。
そして、それを受け入れてもらえる喜び。
ー あたし、幸せだな…
「俺も幸せだよ?」
「この癖…何とかしないとだなぁ…」
「いいんじゃない?俺としては、どっちでも同じ」
ポンポンと頭を撫でられ、つくしは少し不満顔だ。
「もう…」
「それより、出かけられる?」
「あ、うん。大丈夫」
「じゃあ、行こう。下に車待たせてるから」
そして、車は意外な場所で停まった。
「え…ここ…」
「あ、言うの忘れてた。
つくしが花沢に入るの、受けてくれたって親父に報告したんだ。
そしたら、邸に連れてこいって…。
その場で夜の予定全部キャンセルしてたから断れなくてさ」
「ええ…?」
「初対面じゃないんだし、大丈夫でしょ?
うちの両親も、つくしと話してると楽しそうだし」
類に手を引かれるように、車から降りる。
何度か訪れたことのある花沢の邸だったが、いつもより敷居が高く感じる。
「そ、そういうことはちゃんと言ってくれないとっ!
お菓子とか何かそういうの用意したりとかさ!
服だってちゃんとしたの…」
「いいんだよ。そんなこと気にすることない」
「そういうことじゃないでしょ!もう…っ!」
「そんな顔すると、かわいい顔が台無しだよ?」
頬に小さくキスを落とし、繋いでいた手を腰に回し、体を引き寄せる。
「大丈夫だよ、何があっても俺が守るから。
そもそもこの邸に招いたのは親父たちなんだし。
仕事のこととか、話したいことでもあるんじゃないの?」
「そうなのかなぁ…
あ!でもこの話って、前のとこ、ちゃんとお断りしてからじゃないと…」
「それならもう話は着けたよ?
先方も残念そうだったけど、つくしの活躍を願ってますって言ってた」
「え…?」
「だから、つくしはうちに来るしかないね」
ー さすが、決断力と行動力に定評がある花沢の専務だわ…
「お褒めに与り、光栄です」
大袈裟に腰を折り、お辞儀をする類に。
「…いちいち聞いてなくていいんだけど?」
照れくさそうに、そっぽを向くつくし。
そして、二人で声を上げて笑う。
「行こう。みんな待ってる」
指を絡めるように手を繋ぎ、類の両親の元へと歩を進めた。
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