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風邪

2
Category波の悪戯

音を立てないよう、静かに部屋の扉を開ける。
ベッドにはまだ眠っているつくしの姿があって、少しホッとする。

「ただいま、つくし。」

つくしの隣に横たわり、すっかり温かさを取り戻した体を抱き寄せる。
と、その様子が少しおかしいことに気付く。

「つくし?」

薄く開いた唇から吐き出される呼吸は少し荒くて、苦しそうに見える。
頬も僅かに赤らんでいて、触れると驚くほど熱かった。

「ちょっ!つくし?」
「ん…る、い…寒い…」

ブルっと身を震わせ、両腕で体を抱きしめるように身を縮込ませる。
その姿は子供みたいで、ちょっと可愛い…なんて、言ってる場合じゃない!

「つくし、ちょっと待ってな。
 何か薬もらってくるから。」
「ごめ…類…あたし…」
「あんな薄着で出歩いたから、風邪引いたんだろ。
 大丈夫、薬飲めばすぐよくなるから。」
「ん…」

サイドテーブルの内線へと手を伸ばし、事情を伝えて掛物と薬を持ってきてほしいと頼む。
そして、再びつくしを抱きしめる、と。

「類…さっきの人は?」
「さっきの人?」
「類の…婚約者だって…女の人…」
「俺の婚約者はつくしだろ?
 誰が何と言おうと、俺はつくしとしか結婚する気ないから、安心しな。」
「でも…」
「今は余計なこと考えなくていい。
 ずっとここにいるから、早く元気になりなよ。」
「ん…」

スゥっと息を吐き、つくしは再び眠りに落ちた。
その寝顔を見つめながら、つくしを傷付けた奴等のことを忌々しく思う。
早々に手を打たないと、つくしの不安は拭えない。
そのために俺にできることは…。

コンコン。

「専務?大丈夫?」

ノックとともに開いた扉からは関とパトリシア、そして見知らぬ男性が一人入ってくる。
その様子からして、おそらく医者だろう。

「悪いね。戻ったら、ひどい熱で…」
「そうか。念のため、医者を連れてきた。」
「ありがとう。助かるよ。」

つくしの脇を医者へと明け渡し、診察の様子をぼんやりと眺めた。
頭を過るのは、熱に魘されながら呟いた、さっきの言葉。

「ねぇ、関…東郷の娘ってどんな女?」
「あー…美人で頭がいいけど、高飛車で鼻っ柱の強い女だな。
 小さい時からチヤホヤされて育ったせいで、世界は自分を中心に回ってると思ってる。」
「ふ~ん…その鼻、へし折ってやらないと気が済まないね。」
「だろうな。
 お前さんの留守を狙って押しかけて、どうせ禄でもないこと言ったんだろ。
 あの家の女どものやりそうなことだ。」

心底嫌そうに顔を歪める関に、パトリシアは困惑の表情を浮かべる。
きっと彼女もつくしと同じ、純粋で優しい人なんだろう。

「パトリシア。
 すまないね、こんなことになって。
 せっかくのパーティーも、今日は無理そうだ。」
「ううん!大丈夫!パパが『パーティーは日を改めよう』って言ってたわ。
 それよりも、早く元気になるといいわね。」
「ん。つくしが元気になったらさ、フランス語教えてやってよ。」
「…え?私でいいの?」
「ちょっ…俺が教えるのは断ったくせに!」
「俺もあんたも、これからやらなきゃならないことが山積みだろ。
 それに、パトリシアが傍にいてくれたら、つくしも安心するはずだから。
 言葉も通じない、友達もいないなんて、つくしが可哀想じゃん。」

つくしが繋いでくれた縁を、つくしのために活かしていくのは当然。
きっと、この二人はいい関係を築くに違いない。

「うんっ!私も、つくしと友達になりたいって思ってたの!
 ありがとう!類!」
「ん。頼むね、パトリシア。
 その代わり、あんたの彼氏、俺に貸して。」
「うん!いいよ、全然!
 パパも兄さんも、姉さんだって、類の味方よ!
 あんな人たち、ギャフンと言わせちゃってよ!」
「プッ…ギャフン、って…」

思わず漏れた笑いに、パトリシアは一瞬きょとんとして、そして嬉しそうに笑う。

「類の笑顔、素敵ね。」
「そう?でも、つくしの笑顔には敵わないよ。」
「そうなんだ~!ふふっ…楽しみ~!」

そうこうしているうちに、診察を終えた医者がつくしの傍を離れた。
すかさず俺はつくしに歩み寄り、その頬を撫でる。

『少し熱が高いようですが、心配ないでしょう。
 薬を処方しますので、飲ませてください。
 明日になっても熱が下がらないようでしたら、またご連絡ください。』
『わかった。ありがとう。』
『お大事に。』

退室する医者を見送るため、関とパトリシアも一緒に部屋を出て行った。
残された二人きりの空間に、つくしの呼吸音だけが響く。
まだ頬は薄らと赤く、唇も少しかさついて見える。
届けられた薬と水を受け取り、サイドテーブルに一旦置いて、つくしへと声を掛けた。

「つくし、少し起きて薬飲もう。
 水分も摂らないと…」
「ん…」

怠そうに起こした体を支え、薄く開いた口元から薬を滑り込ませる。
コップの水を少しずつ口の中に流し込むと、飲み込みきれなかった水滴が口角から流れた。

「つくし、水飲める?」
「ん…み、ず…」

薄らと開いた瞼の奥に、熱で潤んだ瞳がユラユラと揺れる。
水を求め、薄く開いた唇が頼りなくて、少し考えた後、俺はコップの水を自分の口へと注いだ。
そして、そのままつくしの唇を塞ぎ、少しずつ水を流し込む。

コクン、コクン。

ゆっくりと時間をかけ、少しずつ水を与え、それを飲み込むのを確認して。
用意されていた水が空になる頃、支えていた俺に凭れ掛かるようにしてつくしはまた眠りに落ちた。
そのままつくしを横にして、俺も傍らに寝転び、そっと抱き寄せて優しく囁く。

「ゆっくり、おやすみ。」

艶やかな黒髪を撫で、触れるだけのキスを落とす。
つくしのいつもより高い体温を抱きしめ、その寝息に耳を傾ける。
幾分呼吸が落ち着いてきたのを感じながら、知らないうちに俺も眠りに就いていた。


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2 Comments

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2019/01/22 (Tue) 21:44 | EDIT | REPLY |   
聖

聖  

mi***様

こんばんは(*^-^*)
お越しいただき、ありがとうございます♪

カトルメールの協力を得られて、鬼に金棒といったところでしょうか。
しっかりと足場を固めていってますね。
つくしとの未来のために、がんばってもらいましょう!(笑)

つくしにも早く元気になってもらわないとね。
類のパワーの源は、やっぱりつくしの笑顔ですから♡

コメント、ありがとうございました(´▽`*)♪

2019/01/23 (Wed) 01:20 | EDIT | REPLY |   

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