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懐かしい響き

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Category波の悪戯

「…久しぶり、司。隣は…」
『よぉ、類。』
『類君!ひっさしぶり~!滋ちゃんのこと、覚えててくれた?
 って、つくしはいないの?』

相変わらず遠慮のない声に、フッと肩の力が抜ける。
司はともかく、隣の女…大河原、だっけ?…とはそんなに仲良くなった覚えはないんだけど。

「つくしもいるよ。
 でも、今ちょっと風邪引いてて…」
『えっ?うっそぉ~!
 あの超健康優良児のつくしが風邪?
 信じらんないっ!』
「ここは日本じゃないからね。
 慣れない環境で精神的ダメージ受けたから…」

守りきれなかった悔しさが胸を突き、知らずと顔が歪む。
そんな俺に、司はククッと笑った。

『おめぇもそんな顔するんだな。
 …何があった?』
「…別に、大したことじゃ…」

言いたくないと拒絶の姿勢を示しても、司がはいそうですか、と引き下がるはずはない。
だからといって、自分の失態を露呈するようで、どうにも言う気にはなれなかった。

『あのなぁ…』

やや呆れ声の司はさっきまでの笑みを消し、モニター越しに俺をジッと見つめる。
その瞳は怖いくらい真っ直ぐで、心の奥まで見透かされてるような気さえした。

『ったく…水臭ぇな。
 俺ら、何年つるんでると思ってんだ?』
「でも…」
『日本でのアレコレはあきら経由で聞いた。
 もっと早く知ってれば、あんな会社、とっととぶっ潰してやったのに。』
「いいんだよ、これは花沢の問題だから。」
『だーかーらー!そういうとこが水臭ぇって言ってんだよ!
 お前はともかく、お前の女は滋の親友なんだよ!
 そんな女を手籠めにされそうになって、黙ってられっかよ!』

司のこういうとこ、ほんと変わんないよね。
相手に直球でぶつかれる素直さは、つくしと少し似てるかも。

『ねぇ、類君…つくしは大丈夫?』

大河原が司を宥めながら、静かに問い掛けてくる。
親友を傷付けられた怒りは俺と同等か、それ以上だろう。

「ん…一時はヤバかったけどね。
 でも、もう大丈夫。」
『そっか。つくしは我慢強いからね。
 ちゃんと見ててあげないと、グルグル考えすぎてドツボに嵌っちゃうから。』
「…そうだね。」
『今回のことは私と司は完全に部外者だし、類君や花沢が何とかしてくれると信じてるから心配はしてないよ。
 でもね~、やっぱ黙って見てるってのは性に合わないんだ。
 何かしないと、腹の虫が収まらなくて…』
「気持ちは嬉しいけどね。
 道明寺や大河原を巻き込むほどの大事じゃないよ。
 美作を巻き込んでしまったのも、俺としては本意じゃ…」
『そうか…』

ハァ、と溜息を吐いた司が、後ろに控えていた西田さんから何やら資料を受け取り、目線を落とす。
大河原も隣からそれを覗き込み、資料の文字に目を走らせた。


突然黙ってしまった司に違和感を感じながらも、話は終わったのだと察する。
それはダニエルも同じだったようで、俺に『切っていい?』と目で問い掛けてきた。

「司、忙しいなら…」
『…わかったよ。
 お前の言う通り、今回は俺たちは手を出さねぇ。』
「…ん。」
『だが、何もしないという選択肢はねぇ。
 こっちはこっちで勝手にやらせてもらう。』
「ちょっと、司!何を…」
『俺らは慈善事業をやってるわけじゃねぇ。
 けど、人道に反するやり方で私腹を肥やすのは絶対に許さねぇ。』

それはこの場にいる誰もが思っていることで、そのことに異論を唱える気は毛頭ない。

「…何を知ってる?」
『そんなの、言うかよ!
 言ったら、共同戦線張ってると思われんだろ!
 ただ…美作が持ってる情報より、こっちの方が確かだとだけ言っとくわ。』
「そっか…何でもいいけど、邪魔だけはしないでよ?」
『するか、ボケ!』

相変わらずな返しに、思わず笑みが浮かぶ。
そんな俺に、司もニヤッと微笑んだ。

『落ち着いたら、また会おうぜ。
 こいつがお前の女に会いてぇってうるせぇんだ。』
「だね。つくしも会いたがってた。」
『類君!ほんとにほんとだよ?
 つくしに、絶対また会おうって伝えて!』
「ん、わかった。」
『じゃ、全部片付いたら連絡しろ。
 いいか?今度はお前から連絡寄越せよ?』

やたらと『お前から』の部分を強調されて、そこに司の思いを感じる。

ちんたらしてねぇでさっさと片付けろ、ってことね。

「わかったよ。
 俺だって、いつまでもこんな状況が続くのは御免だからね。」
『ならいい。
 …Quatremer社長、あんたが証人になってくれ。
 道明寺と大河原は花沢と手は組んではいない。
 この通話は、ただの友人との会話だったと。』
「ああ。うちと花沢が手を組んでいる時点で説得力には欠けるかもしれんが、尽力はしよう。
 君も隣のお嬢さんも、なかなか骨がありそうだ。
 今回のことが終わったら、ぜひ商談の席で会いたいものだね。」
『かまわねぇよ。
 欧州もいいが、NY市場にも商機はいくらでもあるからな。』
「NYか…それはなかなか魅力的だね。
 楽しみにしているよ。」



通話を終え、ライアンやダニエルと一緒にミーティングルームを出る。
ライアンは今の話を父さんたちに連絡するため、早々に書斎へと戻っていった。
俺とダニエルは、つくしとパトリシアの待つ部屋へと向かう。

「NYかぁ…何だか夢みたいだ。」

NY市場への誘いが相当嬉しかったのか、ダニエルは僅かに頬を紅潮させて呟いた。

「うまくいくといいね。」
「ああ!そのためにもがんばってくれよ、類!」
「ん。」

リビングの入り口でダニエルと別れ、俺はつくしの元へと歩調を速めた。


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